明治時代に挫折した夢実現へ 知恵絞り志摩産オリーブ油を出荷へ

臼井昭仁
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 三重県志摩市で栽培されたオリーブだけでつくった油が限定発売された。特産品にしようと、約10年前から市の後押しを受けた有志たちが苦心しながら栽培に取り組んできた。オリーブ油の出荷にこぎつけて3季目。明治時代に挫折した当地でのオリーブ栽培は、軌道に乗りつつある。

 志摩市でオリーブをつくっているのは、約30人によるオリーブ栽培研究会。現在の面積は計約1・5ヘクタール。

 きっかけは、市が2011年度から、耕作放棄地を有効利用するため苗木の購入費の補助を始めたこと。企業からの寄付もあり、面積は徐々に増えていき、15年9月には研究会も発足した。

 商品化を模索するなか、市は阿児特産物開発センターに搾油機をリース契約で導入した。20年度からオリーブ油の出荷を始めた。

 志摩市は、オリーブ栽培が盛んな地中海のような温暖な地域なので、育てやすいという印象がある。だが道のりは平坦(へいたん)ではないという。藤木直行さん(70)は「レモンなどの果樹も育てているが、オリーブはとにかく手間がかかる」。大阪府貝塚市から15年前に移住。現在20アールで約60本を育てている。

 研究会の一員として、国内での先進地、香川県を視察で訪れ、栽培方法を学び、耐寒性、耐病性に優れた品種を採り入れてきた。それでも雨や害虫に弱く、枯れて、植え直した木もあった。

 さらに、開花時期に雨が続くと結実しにくく、収穫量が減るという。市によると、オリーブ油を初出荷した20年度は124キロも取れたが、21年度は31キロにとどまった。22年度は37キロ。1本100ミリリットル入りのオリーブ油を22本つくり、先月末に発売した。

 それでもオリーブには独特の魅力があるようだ。50本を育てている岩本秀和さん(76)は「葉を茶葉代わりにして飲めるし、実を蜂蜜に漬けるととてもおいしくなる。色々な楽しみ方ができる」。

 オリーブは、明治時代末、国が各地で栽培の適地調査をしたことがあった。旧志摩郡鵜方村(志摩市)でも試みられたが、塩害などが原因で断念した。ただ、香川県は国内で唯一成功し、今や特産品として定着している。

 志摩市農林課の担当者は「収穫量を安定させるのが課題。志摩での栽培技術を確立できるよう支援をしていきたい」という。

 藤木さんは「思ったより難しいが、海外産とは違った、日本人の口に合ったオリーブをつくる道は見えてきたと思っている。観光の街にふさわしい様々な活用方法も考えたい」と話している。

 志摩産オリーブ油は瓶1本、税込み4600円。リゾート施設・志摩地中海村(志摩市浜島町)が店とオンラインで販売している。(臼井昭仁)

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