被災体験「伝えるのが役目」 阪神大震災から28年、石手寺で慰霊祭
阪神・淡路大震災から28年が経った17日、松山市石手2丁目の四国霊場第51番札所・石手寺で慰霊祭があった。被災者や関係者ら6人が出席、岡田敬典代務住職(77)らの読経に手を合わせた。境内ではボランティアによる水軍太鼓で祈りの曲が演奏された。
慰霊祭は一昨年に63歳で亡くなった加藤俊生(しゅんしょう)・前住職が1997年に始めた。加藤さんは地震発生2週間後から現地で炊き出しなどを行い、被災者支援のためのボランティア団体「打てば響く会」を作って息の長い活動をしてきた。受け継いだ岡田代務住職は、「あの日を今も忘れることができない遺族や被災者の心境を思うと、これからも続けていかねばならないと思う」と話した。
兵庫県西宮市で自宅が全壊し、妻の実家がある愛媛県八幡浜市に移住した森口政夫さん(71)は「この日が1年のスタート」という。
震災体験について「前はそっとしてほしいと思っていた。でも考えが変わり、伝えるのが生き残った者の役目と思うようになった」と話す。西宮で住んでいた文化住宅はJRや私鉄の駅、門戸厄神などに徒歩で行けて便利だった、と懐かしむ。「忘れたようで、今も何かの拍子で思い出す。目の前まで火災が迫り、風向きが変わって助かったことなど(記憶が)ぎょうさん残っている」という。
境内では「打てば響く会」が、現地で支援時に配られたミカンやお菓子の袋詰めを一般参拝客らにも配り、震災当時をしのんだ。
同会事務局長の木城香代さん(70)は、慰霊祭で支援活動を通じて巡り合った多くの人々の顔が頭に浮かんだ。「つながりはとても大事。支援で出会った人はその後も愛媛で何かあると心配してくれる」といい、「活動を次代につなぐことを課題に取り組む」と話した。(戸田拓)
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