政策にまったく問題はない、効果は十分ある、必ず達成する――。こうした強気の説明はこの10年の任期中、日本銀行の黒田東彦総裁が使い続けてきた定番フレーズだ。日銀の政策が国債市場を動揺させ、金融政策の先行きに不安と不信が広がるなかで開かれた18日の記者会見でも、黒田総裁はそのスタイルを押し通した。
異次元緩和の大転換か、あるいは現状維持か、はたまた玉虫色の微修正か――。
金融市場やマスメディアが見つめるなかで日銀の金融政策決定会合(年8回開催、メンバーは総裁以下9人)が17~18日開かれた。
今回いつにも増して注目を集めたのは、いま国債市場を動揺させている長短金利操作(YCC、イールドカーブ・コントロール)に日銀はなにがしかの修正を加えるのではないかとの見方が広がっていたからだ。
日銀は昨春、YCCの運用で長期金利の指標となる10年物国債金利の誘導幅をプラスマイナス0・25%と設定し、そこを超えることを許さない運用を始めた。しかし世界的なインフレと金利上昇の圧力の高まりで、日本だけが超低金利を続けることは難しくなっていた。日本国債の長短金利曲線は不自然にゆがみ、その矛盾に目をつけた海外ファンドが日本国債の空売りを仕掛けてきた。
追い込まれた日銀は昨年12月20日、誘導幅をプラスマイナス0・5%まで拡大して対応した。予想もしていなかった市場は驚き、一気に5円超の円高ドル安が進んだ。国債価格や株価は急落。その市場の動揺はいまも続いている。
そのなかで迎えた18日の政策決定会合である。日銀がYCCの撤廃や修正に踏み切るのではないかとの観測もあったものの、変更は見送られた。
納得しない記者、真正面から答えない総裁
18日夕におこなわれた記者…

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