火事で母を失ったのに 「おはらいしたら」周りの言葉で仕事も辞めた

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江戸川夏樹
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 母の棺を載せた警察のバンが病院を後にする。スロープを上る時のテールランプのオレンジ色が目に焼き付く。東京都の轟(とどろき)浩美さん(60)は9年前、火事で81歳だった母を失った。

 連絡が来てからの怒濤(どとう)の3時間。今も後悔が続く自分の判断。さらに、心をえぐられたのは、火事後にあらゆる人がかけた言葉だった。

 「お母さんの家が火事になっている」

 その電話が仕事先の幼稚園にかかってきたのは、9年前の2014年1月14日。実家の近所に住む知人が連絡してくれた。

 知人は続ける。

 「まだお母さんが見つかっていない」

 都内の実家へとタクシーを飛ばす。途中で再び連絡が入った。「お母さんは病院へ向かった」

 行き先を変えた矢先に病院から連絡があった。

 「10分以内に生命維持装置をつけるかどうか決めてください」

「うろたえることすら」 次々と迫られる判断

 母親の容体も、火事の様子も…

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