アマミノクロウサギは「運び屋」 光合成しない植物かじりフンで分散

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矢田文
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 鹿児島県奄美大島などに生息する国の特別天然記念物アマミノクロウサギが、島の希少な植物であるヤクシマツチトリモチの種子の「運び屋」を担っていたことが神戸大のチームの調査でわかった。世界自然遺産に登録された貴重な生態系のつながりが新たに明らかになった。

 ヤクシマツチトリモチは屋久島や奄美大島に分布し、光合成はせず木の根などから栄養を得る寄生植物。鹿児島県レッドリストでは準絶滅危惧とされている。動物を視覚的に引きつけるような赤色の葉や果実の集合体(果序)をつくるが、どんな動物と関係を結んでいるのかはわかっていなかった。

 チームが調べたところ、多くの果序に哺乳類がかじりとったような痕が残っていることがわかった。そこで、2021年1~3月にヤクシマツチトリモチの周辺にカメラを設置し、訪れる生き物を観察した。

 その結果、アマミノクロウサギと、シロハラという鳥が果序を食べていることが判明。さらに、5カ所で採取したアマミノクロウサギのフンを顕微鏡で観察すると、すべてのフンにヤクシマツチトリモチの種子が含まれており、発芽する能力を有していた。

 アマミノクロウサギは個体による食べ物の好き嫌いが多い。だが、動物園で飼育される個体4匹を使った実験では、いずれもヤクシマツチトリモチを食べたという。同大の末次健司教授は「好んで食べている可能性もある」。

 一般的にウサギの仲間は植物の葉や茎をエサにしている。ウサギが種子の散布に関わっているという報告は珍しく、アジアでは初確認の事例という。

 また、マングースの捕食など…

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