自殺者数が2年ぶり増 複雑化する相談 コロナ禍影響、生活の隅々に
2022年の自殺者数は速報値で2万1584人となり、前年より577人(2・7%)増えた。増加は2年ぶり。中高年の男性で大幅に増えた。支援団体は「コロナ禍の影響が生活の様々な場面に浸透し、生きるための基盤が低下している」と訴える。
厚生労働省の20日の発表によると、男性は前年より604人増え、1万4543人。男性は13年ぶりの増加となった。特に中高年で大幅に増え、昨年11月までの暫定値では、50代が2604人(前年同期比12・9%増)、80代以上では1425人(同16・8%増)だった。
女性は7041人。前年より27人減ったが、コロナ下で3年連続で7千人台になった。
職業別では、失業給付や年金などを受けて暮らす人が5347人と26・6%を占め、その6割超が男性だった。厚労省の担当者は「経済的な要因も影響している可能性がある」と話す。
一方、小中高生は11月までの暫定値で441人。通年で過去2番目に多かった21年に並ぶ高水準だった。
人口10万人あたりの自殺者数を示す自殺死亡率は、17・2(前年は16・7)だった。都道府県別では、前年に続き山梨が24・3と最も高く、秋田が23・7、宮崎が22・7と続いた。
「行動の動線に支援を」
自殺者数は1998~2011年まで3万人台で推移。その後、減少傾向が続いていたが、20年に11年ぶりに増加に転じた。21年以降も高止まりが続いている。
自殺対策に取り組むNPO法人「ライフリンク」代表の清水康之さん(50)は「ピーク時よりは減少しているものの、国際的にみれば高い状況」という。G7(主要7カ国)で自殺死亡率(16~19年)を比べると、日本の15・7(19年)は、米国の14・6(同)を上回り、最も高い。
「ライフリンク」は無料の電話相談「#いのちSOS」とSNSの相談窓口「生きづらびっと」を運営する。昨年、SNS相談には3万2965件が、電話相談には1~11月末で4万5175件が寄せられた。体制を強化しているが、対応しきれないほど多くの相談があるという。
コロナ禍で3年がたち、直接コロナに関連する相談は減っているが、感染拡大が長期化した影響が生活の様々な場面に浸透している、と清水さんはみる。
当初寄せられた相談は、行動制限などをめぐる内容が中心だったが、その後、生活やお金、さらに家庭やDV(配偶者らからの暴力)などの問題にも広がっていったという。
「コロナ禍以降、相談内容がより複合的になっている。経済や家庭の状態など様々な面から生活全体の基盤が低下している」
政府は昨年10月に自殺対策の指針となる新たな自殺総合対策大綱を決定した。重点施策のなかには、新たに女性への自殺対策の推進が加えられた。
清水さんは「支援窓口をリスクを抱えている人の目にどうやって届けるかが大切。非正規の女性であれば人材派遣会社やハローワークに周知し、情報に触れられるようにするなど、行動の動線に支援を沿って届けていくことが必要だ」と話す。(石川友恵)
◆悩みの相談先
【#いのちSOS】 0120・061・338 月、木、金曜は24時間、その他の曜日は午前6時~翌日午前0時
【いのちの電話】 0120・783・556 毎日午後4~9時
【チャイルドライン】 電話 0120・99・7777
チャット https://childline.or.jp/chat
【24時間子供SOSダイヤル】 0120・0・78310 毎日24時間
【生きづらびっと】 LINE @yorisoi-chat
【あなたのいばしょ】 オンラインのチャット相談 https://talkme.jp/
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