東北でもコロナの死者が急増 急がれる対策
政府は新型コロナウイルスの感染症法上の分類について、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」へ引き下げる議論を始めたが、コロナの感染拡大は「第8波」のさなかにある。その死者数は全国的に増加し、東北も例外ではない。統計上の「重症者」には含まれないが、コロナ感染がきっかけで命の危機に直面する高齢者がいま目立つ。現状を分析し、死者を減らすための取り組みが急がれる。
「(オミクロン株は)いくら死亡率が低いと言っても、感染者数の母数が多いことで、結果として亡くなる方が増えている」
10日、福島県庁であった定例記者会見で内堀雅雄知事は語気を強めた。
東北6県が発表するコロナ感染・死亡者数をもとに朝日新聞が集計したデータによると、国内でコロナ感染が初確認された2020年1月~23年1月20日時点の死者数の累計は、宮城が846人で最も多く、2番目は青森(591人)。第8波で死者は急増しており、山形を除いて昨年12月は前月に比べて倍増し、今年に入っても増加を続ける=表。
同期間中の福島県の死者数は547人。うち昨年12月に発表された死者数は計108人で、1カ月あたりの死者数は過去最多だった。年代別では70代~90歳以上が82%と、高齢者が高い割合を占めた=グラフ。
高齢者の死亡状況としてここ最近多いのは、重度の認知症や寝たきりの高齢者が入居施設や入院先の医療機関でコロナに感染し、もともとの基礎疾患や病気が悪化して重篤な状態になるケースだという。
この場合は統計上、コロナの重症者には含まれないため、県内の1日あたりの重症者は数人程度で推移してきた。日々、県が発表する重症者はコロナによる肺炎が悪化し、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を装着する人などに限定されるためだ。
県医師会の土屋繁之副会長は「基礎疾患のある高齢者がコロナ感染をきっかけに動けなくなり、食べられなくなって亡くなる事例が多い」と指摘し、「高齢者の『元気』というのは常にぎりぎりの健康状態で、急変するリスクがある」と警鐘を鳴らす。
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コロナによる死者増加のなか、東北各県は死者の属性などのデータを集積・分析して、感染防止や治療に役立てようとしている。
65歳以上で基礎疾患がある人の死者が増えているという岩手県は、高齢者施設での感染防止のため、施設職員に検査キットを重点配布した。秋田県は、社会福祉施設でのクラスター(感染者集団)発生が死者急増につながったことから、感染の初期でも適切な薬を処方するよう、高齢者施設の嘱託医に通知を出すなどしたという。
一方、各県が公表するコロナ関連のデータにはばらつきもある。公表する項目が一番多い青森県は患者ごとに管轄保健所、年代、性別、死亡日、死因、療養状況を「補足資料」として日々、報道機関に提供している。一方、公表項目が最も少ないのは福島県で、年代と性別のみだ。基礎疾患の有無についても、「医療機関から報告があった場合のみ把握している」(県の担当者)。どの県も、遺族の意向などから公表を一部控える例はあった。
年代や性別、療養状況などを公表する宮城県の担当者は「個人情報保護とのバランスは保ちつつ、県民が現状を正しく把握し、感染を広げないために役立つ情報は公開している。県庁内でもデータを分析し、医療体制の検討などに反映させている」と話す。(力丸祥子)
新型コロナによる東北各県の死者数
県(累計) 2022年11月 12月 23年1月20日時点
福島(547人) 47人 108人 88人
青森(591人) 69人 140人 53人
岩手(535人) 66人 149人 116人
宮城(846人) 106人 211人 112人
秋田(536人) 72人 143人 65人
山形(336人) 48人 54人 25人
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