泳ぐダイオウイカ撮った!ダイバー夫婦「目、吸盤…迫力すごかった」
深海にすむ世界最大級の無脊椎(せきつい)動物ダイオウイカの泳ぐ姿が、兵庫県豊岡市竹野町の沿岸で撮影された。ダイオウイカの生態は不明な部分が多く、目撃されるのは珍しい。ダイバーたちが連係し貴重な映像を残した。
6日午後4時ごろ、同町の釣具店経営の与田勉さん(46)が船で港の出口付近を航行中、海面付近で大きなイカが足をくねらせているのを見つけた。「ひょっとしたらダイオウイカかもしれない。誰かに教えなあかん」。そう思い、同町のダイビングインストラクターの田中美紀さん(34)に携帯電話で連絡をした。
与田さんは、美紀さんと夫の陽介さん(41)を船に乗せ改めて海に向かった。午後4時半ごろ、田中さん夫妻が水中に潜ると、体長約2・5メートルのダイオウイカがゆっくりと泳いでいた。
2人は手が届くほどの距離まで近づき、陽介さんが写真、美紀さんが動画を撮影した。「足がすごく太くて危険だと考え、足に近づかないように気をつけました。目や吸盤も大きくて迫力がすごかった」(陽介さん)。「一生で一度だけかもしれない深海の生物に会うことができ、夢中で撮影しました」(美紀さん)。海に潜ってから約30分後、日が暮れダイオウイカも港の外へ出たため、撮影を終えた。
2006年に世界で初めて生きているダイオウイカのビデオ撮影に成功した窪寺恒己・国立科学博物館名誉研究員(71)によると、ダイオウイカの寿命は長くて約3年とみられており、「撮影されたのは1~2歳くらいではないか」。通常なら長い触腕が2本あるが、今回のイカにはそれが無く、何らかの理由で切れてしまったのではないかとみる。触腕があれば、長さ5メートルほどだった可能性があるという。
ダイオウイカは普段は水深600~1千メートル、水温4~10度の深海にいると推測されているが、今回は水深約5メートル、水温13度ほどの沿岸で見つかった。窪寺氏は「冬になり冷えた海水を避けて、比較的水温の高い沿岸に移動してきたのではないか」と推測する。「映像を見る限り、かなり衰弱している。長く生きるのは難しいかもしれない」とも。
但馬地方ではこれまでもダイオウイカが浜辺に打ち上げられたり、引き揚げられたりしたことがあるが、窪寺氏によると、泳ぐ姿を至近距離から撮影できるのはまれだという。陽介さんは「会えたのは奇跡です」。美紀さんは「すごく興奮し、感動しました。ただ、もう二度と会えないでしょうね」と話していた。(森直由)
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