会える時に、たがいの国を行き来する。2人が望んだのは、そんな愛のかたちだった。ところが――。
2022年11月、ドイツ北西部の小さな町の病院で赤ん坊が産声を上げた。新井卓さん(44)は、ドイツ人のノリアさん(29)との間に生まれた小さな命を腕に抱いた。
幸せな気持ちとともに、入国制限に翻弄(ほんろう)された2年半余りの日々を思い返した。
日本でアーティストとして写真や映像の制作をしていた新井さんは、広島のギャラリーでインターンをしていたノリアさんと7年前に出会い、20年4月に遠距離で交際を始めた。
会える時に会い、世界を旅する。そんな自由な関係を大切にしたかった。
当時、新型コロナはすでに世界に広がっていた。日本は「特段の事情」を除き、73カ国・地域からの外国人の入国を制限していた。
2人は時差があるなか、会える日を心待ちにして、毎日ビデオ通話をした。はがきも送り合い、たがいが一番の理解者と実感した。
しかし、事態はいっこうに収束せず、会えない期間だけが延びていく。画面越しでけんかすることも増えていった。
「信頼し合っているのに、愛し合っているのに会えない。どうすればいいのか」
自由な関係を望みながら、新型コロナの波にのまれた2人。壁を乗りこえようと、ある決断をしますが……。
解決策を求めて、新井さんは必死にネットで調べた。外務省、厚労省、法務省……。関係がありそうな省庁のサイトで関連文書を通読した。
そして、ある言葉が頭に浮か…
- 【視点】
コロナ禍ほど「境」を意識させられた経験は珍しいのではないでしょうか。私たちがサポートする海外ルーツのご家庭では、親御さんが”一時的”のつもりで帰国したところ、日本へ戻ってこられなくなり、当時未成年の子どもたちだけで生活しなくてはならない状況
- 【視点】
家族でさえ、何十年も日本で暮らしてきた定住外国人や、ビジネスパーソン、研究者でさえ、帰国が認められなかったことの弊害を、深刻に捉えなくてはいけないと思います。外国にいた私は一時帰国の際、三日間の隔離で済みました。その差に科学的根拠はどこにも

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