【そもそも解説】なぜ金利は上下するの ローンのリスク判断も割れる

編集委員・中川透
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 長年低く抑えられてきた日本の金利。昨年末に上昇の兆しが出て、住宅ローン金利などへの影響が気がかりです。そもそも金利はなぜ上下し、今後どんな変化に注目すべきでしょうか。

Q 金利が上がると、私たちの暮らしにどう影響するの?

A 住宅ローン金利の引き上げが最近話題ですが、私たちへの影響は、お金の借り手としてと、貸し手(預金者)としての両面があります。預金金利はまだ上がっていませんが、預金と同様な元本割れのない、個人向け国債「変動10年」(変動金利型の10年物国債)の利率は上昇しました。最新の2月発行分は0・33%(1月は0・17%)で、7年半ぶりの高さです。金利が将来高くなると、私たちは借り手としてマイナス、貸し手としてプラスです。

Q これから金利のどんな点に注目すべきなの?

A 金利は1年未満の貸し借りの短期金利、1年以上の長期金利に分かれます。今上がっているのは、10年満期の国債の利回りで表す長期金利。住宅ローン金利も、長期金利に連動する固定型が上がり、短期に連動する変動型は横ばいです。長期はさらに上がるか、短期はこの先も低いままなのか、二つの動きに注目です。

Q 今は住宅ローンを変動型で借りた方がオトクなの?

A 一概にそうとは言えません。変動型は金利が上がらなければ、総返済額は固定型より少なくなりますが、将来大きく上がると固定型より増えます。住宅ローンは借りる期間が長く、金利の先行きを見通すことは難しいです。変動型は金利が変わる影響(リスク)を借り手が負う借金で、固定型はそのリスクを心配せずにすむ一方で保険料のような形で高い利率を負担する借金です。返済額の多さ少なさだけでなく、借りる期間や年収と照らし、金利変動が自分にとって背負えるリスクかどうかを考えるべきです。

Q そもそも金利はなぜ上下するの?

A 金利は経済活動を調整する機能があります。低金利だから今がマンションを買うチャンスと考えるように、金利が下がると個人の消費が活発になり、企業の投資が進みます。反対に上がると、消費や投資を抑える作用が働きます。金利を決めるのは、日本銀行など各国の中央銀行。物価を安定させるのが役割で、モノやサービスの値動きをもとに金利を上げ下げします。米国は物価が急上昇していて、景気の過熱を抑えるために金利を上げています。

Q 日本で金利が上がると経済への影響はどうなるの?

A 金利上昇はお金の借り手には痛手で、今の日本では政府と企業に大きく影響します。政府は国債の利払いが増え、企業は投資へ慎重になります。また、低金利を前提にしたお金の流れやビジネスが見直しを迫られます。私たち個人の身の回りでも、低金利でお金を借りて進める不動産投資などは、今までのようにうまくいくとは限りません。金利の変化は、円高や円安の要因のほか、株価を動かす要因にもなり、投資の際はより注意を払う必要があります。(編集委員・中川透)

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