明かりが消えた通りに、人影はない。
最大都市ヤンゴンの男性会社員(25)は昨年8月、友人と一緒に、ほろ酔い気分で夜の繁華街をぶらぶらと歩いていた。
午前0時を回った。
ミャンマー国軍が定めた外出禁止令の開始時刻から、数分が過ぎていた。
近くの詰め所から警官が出てきて尋ねた。
「外出禁止令の時間帯だ。なぜ外にいる」
男性は、少し先にあるナイトクラブを指さして言った。
「あの店に行こうと思っていたら、遅くなってしまったんです」
警官は指さす方向を振り返った。
「あの店に行くのか?」
警官はうなずくと、「行け」と手で合図した。
連載「弾圧と抵抗のフロンティア ミャンマー クーデター2年」の初回はこちら
2年前、クーデターで国軍が実権を握って以降、ミャンマーは混乱し続けている。治安の悪化、景気の落ち込み、横行する賄賂――。絶望的な現実から目を背けるため、麻薬に手を染める若者もいる。
「K」を吸入 暗い店内でサングラスの理由
記者の取材に応じた男性は、こう言った。
「軍も警察も、ナイトクラブ…