恋人は国軍に殺され、墓を掘り起こされた 残された20歳は今も苦悩

ミャンマーはいま

福山亜希
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 クーデターを起こしたミャンマー国軍に恋人の女性を殺されたベイベイーさん(20)の苦しみは、月日が経っても癒えることがない。クーデターの発生から2月1日で2年を迎える。

 恋人の墓前に立つたび、ベイベイーさんは葛藤を感じる。「遺体を墓から掘り起こした国軍は、きちんと彼女を埋葬し直したのだろうか」。棺の中を確認したい衝動にかられるという。

 2021年3月3日、恋人は第2の都市マンダレーで抗議デモに参加中、頭を撃たれて亡くなった。19歳のチェーシンさん。「エンゼル」の愛称で親しまれ、死後は、国軍の弾圧による犠牲者を象徴する存在となった。

 国軍は銃撃を否定し、墓を掘り起こして遺体の頭部から弾丸を取り出した。国営メディアは「国軍が使用しているのとは別の弾丸が見つかった」と報じた。

 当時、恋人宅で過ごしていたベイベイーさんは、彼女の両親の苦悩をつぶさに見てきた。

 「怒りも悲しみも押し殺し、ただ人目を避けていた。『何も言うな』と、国軍に口止めされていたのだろう」と振り返る。

 母親は夜になると毎晩のように泣き続け、しばらくして実家に帰った。父親は口数が減り、自宅を空けることが増えた。

 恋人の死の数カ月後、デモは鎮圧された。今、街には見せかけの平穏が戻っている。「国軍が支配する街で、普通に暮らそうとしている自分にいら立ちを感じてしまう」。やるせなさがこみ上げる。(福山亜希)

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