褐色の肌に真っ赤な口紅。
長い黒髪はひっつめてお団子にしている。
昨年9月、最大都市ヤンゴンの公園で、女性(22)は朝から客を待っていた。
近所の人にばれないよう、家から遠いその公園を選んでいる。
でも、いつ来ても同業の女性が数人いる。
「今日も稼ぎなしか」
スマホを見ると、午後3時近くになっていた。
公園の芝に座り込み、持ってきた菓子をつまんだ。
そのとき、周囲の女性たちがぱっと駆けだし、四方八方に散っていった。
顔を上げると、目の前に深い緑色の軍車両が止まっていた。
連載「弾圧と抵抗のフロンティア ミャンマー クーデター2年」の初回はこちら
国軍のクーデターから2年を迎えるミャンマー。経済状況も悪化し、警察や公務員らが賄賂を平然と要求し始めている。特に搾取されているのが、生活に困窮して売春をする女性たちだ。
待っていたのは暴力 女性警官に囲まれて
荷台から降りてきた兵士が、妙に優しい笑顔を浮かべている。
「お姉さん、この車の荷台に…
- 【視点】
世界中どこでも危機が訪れると、一番打撃を受けるのが女性や子ども、障害者などの弱者層ですが、一番スポットライトが当たりにくい、報道されにくい部分でもあります。絶望感を味わいながらも、この連載の渾身の取材力には驚かされました。他に道がなく、スト