電気も水道もないタイ国境近くの山中に、もう2年近く潜伏している。
木や竹を切って組み立てた家。
木の葉やシートをかぶせただけの屋根。
たらいの水を使って、自分で洗濯する。
そんな日々にもすっかり慣れた。
銃を触って嫌な心持ちになったのは昔のことだ。
今は何の抵抗もなく手に取れる。
部下たちの前で拳銃を構えてみせる。
数十メートル先の的を正確に射抜いた。
こんなことも朝飯前だ。
ミャンマー国軍と戦闘を続ける「ビルマ人民解放軍(BPLA)」を率いるマウンサウンカさん(30)は、かつて反戦詩人として知られていた。
2015年には、民政移管を受けて成立したテインセイン政権を風刺する詩を書き、名誉毀損(きそん)の罪で半年ほど刑務所に収監された。
表現の自由を尊重していないと、政権トップに立ったアウンサンスーチー氏を公然と批判したこともあった。
「反戦詩人の自分が、武力でしか問題を解決できないという結論に達した。後悔はしていないが、こんな巡り合わせになってしまったのは、不運としか思えない」
連載「弾圧と抵抗のフロンティア ミャンマー クーデター2年」の初回はこちらから
ミャンマーでクーデターを決行した国軍の激しい弾圧が、国軍に抵抗する過激な若者たちを生んでいる。その一部は武器を手にし、タイ国境地帯などで国軍と衝突を繰り返している。弾圧が抵抗を生む悪循環が断ち切れない。
かつてジョン・レノンTシャツ 今は軍服
着慣れた軍服姿でオンライン取材に答えたマウンサウンカさんは、自身の境遇を淡々と語った。
十数人の仲間とBPLAを立…