新たなる政治の空騒ぎ 憲法学者の蟻川恒正さんが見た日本の姿 寄稿
安倍晋三元首相の銃撃事件を機に浮かび上がった政治と宗教の深い結びつき。「敵基地攻撃能力」の付与で大きく転換する戦後日本の安保政策……。自民党が政権に復帰して10年余、この国の政治の姿について、憲法学者の蟻川恒正さんが寄稿しました。
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「ただ死と云(い)う事だけが真(まこと)だよ」
「いやだぜ」
「死に突き当らなくっちゃ、人間の浮気はなかなかやまないものだ」
「やまなくって好(い)いから、突き当るのは真っ平御免だ」
「御免だって今に来る。来た時にああそうかと思い当るんだね」
「誰が」(夏目漱石『虞美人草』1907年)
2022年7月8日、首相在職日数歴代最多の記録を持つ安倍晋三氏が、選挙応援演説中の警備の隙をついた凶弾に斃(たお)れた。
死ぬ者がいて、その死に「突き当る」者、その死の意味に「思い当る」者がいる。
近代日本政治史に宿痾(しゅ…
- 【視点】
気鋭の憲法学者、蟻川恒正さんの寄稿を読んで、時代を見抜く確かな眼力とともに知識人としての誠実な姿勢にさわやかな感銘を覚えました。 というのも、この寄稿を読みながら、政治学者の丸山眞男がかつて発表した「『現実』主義の陥穽」を思い出したか