世界の多くの企業や自治体などが、温室効果ガス排出の実質ゼロ(ネットゼロ)を宣言している。
地球温暖化対策をアピールするが、実現に向けた道筋や根拠が示されていない場合も多い。環境に配慮していると見せかける「グリーンウォッシュ」にならないよう、ネットゼロ宣言を掲げる際の指針を、国連が報告書にまとめた。
執筆者の1人として日本から唯一参加した三井住友信託銀行の三宅香さんは「対応が遅れると日本の国力や投資先としての魅力が失われるリスクがある」と危機感を募らせる。
――報告書がつくられた背景は何ですか。
ここ1、2年でネットゼロをめざそうという機運が急激に高まっています。世界のGDPの9割に相当する国・地域や企業が宣言しており、大変喜ばしいです。
しかし、実際に行動が変わっていないケースもあり、世界の排出量は増えていて、『宣言しただけですか』という声も聞かれる。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、気温上昇を1・5度に抑える世界目標を達成するには、2025年に世界の排出量を減少に転じさせなければいけない。50年までには、と言っている場合ではなく、あすからでも行動を変えなければ今の傾向は変わらないという焦りが、世界では強まっています。
そこで、国連のグテーレス事務総長から依頼を受けた専門家グループが、ネットゼロの定義などを明確にすることになりました。
――報告書の注目点は?
2050年ネットゼロなら、そのために必要な短中期での大幅な排出削減の目標と行動計画を定めることを求めています。「中期」とは2030年のこと、「短期」とはそれより手前のことで、短期の目標を明確に打ち出したのがこれまでとは違う呼びかけです。30年までが重要で、「時間との闘いですよ」というメッセージです。
記事後半では、日本企業や政府に対しての、注意すべき点や提言を聞いています。
――日本企業が注意すべき点はありますか?
日本企業には、二酸化炭素(…