インフレ率を超える賃上げは可能か 専門家「春闘はある意味で崩壊」
歴史的な物価高の中で、今年の春闘が始まりました。労使とも賃上げに前向きで、近年2%前後にとどまってきた賃上げ率がどこまで伸びるかが注目されます。政府が求める「インフレ率を超える賃上げ」は実現するのか、賃金制度に詳しい日本総研の山田久・副理事長に見通しを聞きました。
――今年は労働組合の中央組織・連合が賃上げ目標を「5%程度」に引き上げました。実際の賃上げはどこまで進むと思いますか。
「賃上げ率は厚生労働省の調査で2002年に2%を切った後、低迷してきました。久しぶりに2%を超えたのが14年。(安倍政権が賃上げを呼びかけた)『官製春闘』のときですね。それ以降も大体2%台前半で、『2%台半ばの壁』が続いてきました。今年はその壁を越えて、3%にどこまで近づいていくかが焦点です」
――3%を超える賃上げは難しいですか。
「過去からの連続性もあるので、いきなりがっと上げられるのか、という面はあります。経団連も(賃金体系を底上げする)ベースアップ(ベア)に前向きですが、慎重なトーンも残しています」
「ただ、3%を超えないからといって十分でないということではありません。2%台後半になれば、98年(2・66%)以来です。(日本経済研究センターの集計で)民間エコノミストの予想は平均2・85%で、そこまでの数字が出ればトレンドが変わったという雰囲気になると思います」
――政府は「インフレ率を超える賃上げ」を求めていますが、具体的な基準はどう考えたらいいでしょうか。
「あいまいなところがありま…
- 【解説】
春闘の賃上げ率の集計対象となる労働組合員は、全体の労働者からすると、約5%程度しかない。これを労働者全体の傾向と混同してはならない。 全体の労働者の名目賃金の上昇率が過去どのようなものであったか、厚生労働省のデータでは1991年まで遡