自分と年齢が近い、若いベトナム人技能実習生たちが、日本で不安な思いをせずに働けるようにしたい。
そんな思いで日本の高校生が始めた活動が全国に広がっている。
地方の方言や、若者が使う言葉をオンラインや対面で教える。立場や国籍を超えた、若者たちの交流にもなっている。
インドで見た世界の現実
「Adovo」(アドボ)は2020年12月、東京都内の高校3年生、松岡柊吾(しゅうご)さん(18)ら3人で立ち上げたNPOだ。当時、松岡さんは1年生だった。
きっかけは、松岡さんが中学3年生の時、インドに短期留学したことだった。
ホストファミリーは家政婦が3人もいる裕福な家だった。その一方、町を歩くと、ストリートチルドレンもいた。貧困や貧富の格差を初めて目の当たりにし、ショックだった。
帰国後、テレビのドキュメンタリー番組で見た。ベトナム人の技能実習生たちが暴力を受けたり、賃金の未払いがあったり。たまたま、その番組の中で実習生を助けていたベトナム人の尼僧ティック・タム・チーさんが自分の通う高校へ講演に来ていたこともあったかもしれない。追い詰められる実習生の姿を見て、いたたまれなかった。
「もし自分だったら」
インドから帰国し、自分の身に置き換える癖がついていた。
どんなにつらいだろう。何かできないか。ボランティアとして、日本語などを教えられないか。
SNSで「手伝ってくれる人はいますか?」と呼びかけた。
高校生だからできた体当たりの電話
そんな声に応じたのが、ニュージーランドに留学中だった幼なじみの名取陸之助さん(18)だった。名取さんも現地で言葉も文化も分からず、なじめない生活の中で暮らす大変さを感じていた。困った状況にある実習生もきっと心細いにちがいない。
「手伝うよ」
2人で思いついたのは、方言や若者が使うスラングなどの日本語、観光名所や習慣などの文化を教えることだった。ベトナムで日本語などを教え、実習生を日本に送り出す「送り出し機関」ではきっと教えないだろうと考えた。あらかじめ勉強しておけば苦労も減るはずだ。
ベトナムへのつてはなかった…