失いかけた声、思い出した夢 「映画がライブになる」カツべンの魅力
照井琢見
無声映画を軽妙な語り口で説明する活動写真弁士。大森くみこさんは日本に15人ほどと言われるプロの弁士のひとりで、関西を拠点に活動している。
無声映画に命を吹き込む
「本日はにぎにぎしくもご来場の栄(えい)を賜り、厚く厚く御礼申し上げます」
スクリーンの下手に陣取り、観客の目の前で無声映画に命を吹き込む。マイク片手に小気味よく、主演や助演のセリフを語り、実況に解説、ときにはツッコミまで。
「カツベン」を支える活動写真弁士の役割は、作品の中でくるくる変わる。「しゃべり手として、こんなに面白い芸能はないと思います」
俳優を志したが
兵庫に生まれ、京都と大阪で育った。大学時代は東京で、舞台俳優を志したこともあったが、「貧乏しながら続ける自信がなかった」。卒業して大阪に戻り、職を転々とした。
人前でしゃべるのが好きで、コミュニティーラジオでレギュラー番組を持った。
俳優の夢を諦め、おしゃべりの仕事へ。「もう諦めたくない」と踏ん張るも、声が出ない。大ピンチで思い出したのは、古くて新しいエンタメ「カツベン」へのあこがれだった。
後悔することは何か
しかし、30歳を過ぎて急に…