皿に口をつけて食らう 腕が動かなくなったすし職人、復活への執念

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編集委員・中島隆
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 京都市の繁華街、四条河原町。その騒がしさの横につながる長屋の一角、そこに江戸前ずしの店「ひご久」がある。

 肥後誠治さん(58)と久美子さん(63)の夫婦ふたりで、切り盛りする。店は最大11人が座れるカウンター席だけ、一晩に座れるのは1席に1人だけ、予約客だけ。そして、料理は誠治さんが心をこめてつくるおまかせだけ。

 だけ、だけ、だけ。そんな限定をしているのには、理由がある。

 これは、すし職人を続けることをあきらめなさいと医師に宣告された夫と妻の、奇跡の物語である。

 2013年5月の、ある朝。誠治さんが目覚めると、首に激痛をおぼえた。寝違えたのだろう。2~3日したら治ると思ったが、治らない。指がしびれるようになった。

 「はよ病院に行こ」…

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