「抱える不安みんな一緒」小さく生まれた赤ちゃん、想定超える回答数

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メディア空間考 河原夏季

 2カ月前、私は胃が痛かった。フォーラム面の「小さく生まれた赤ちゃん」企画のウェブアンケートに、回答が集まるか不安だったからだ。

 「小さく生まれた赤ちゃん」とは、2500グラム未満で生まれる低出生体重児のこと。日本では多くの赤ちゃんが妊娠37~41週(正期産)で生まれ、平均出生体重は約3千グラムだが、およそ10人に1人が小さく生まれている。

 多くの子は元気に成長する一方で、ごく早く小さく生まれるほど発達がゆっくりだったり、病気や障害のリスクが高くなったりする。低出生体重児の割合は1975年の5.1%から2021年は9.4%と増えているが広く知られておらず、対象者も限られる。

 しかし、ふたを開けてみると想定のはるか上をいく千件近い回答が届いた。家族会を中心に、SNSなどで拡散してくれたことが大きい。

 「娘は1600グラム、息子は800グラムで生まれました。色々な気持ちを共感してくれる同じ境遇の方とのつながりを求めていました」(30代女性)

 「息子が1659グラムで生まれました。小学生になりますが、小柄で発達面が少々マイペースながらも彼なりに頑張っています」(40代女性)

 「娘は1999年に28週765グラムで生まれました。幼稚園ではみんなについて行くのが精いっぱいだったと思いますが、中学生になる頃には成長が追いつき、今は何の心配もありません」(50代女性)

 回答の多くは家族や本人から届いた。自由記述には成長の不安や母親のメンタルケアなど支援を求める声、経験談がびっしりと並んだ。30~40代が中心だが、成人した子の成長過程について語り、現役世代を励ます50~60代の声も寄せられた。

 ツイッターでは、寄せられた回答を見て「皆さんのコメントで少し楽になった」「抱える不安はみんな一緒なんだな」とつぶやいている人もいた。

 私の不安は杞憂(きゆう)だった。むしろ、対象者が限られるからこそなかなか語れる「場」がなく表に出てこなかった声を、少なからず可視化できたのかもしれない。

 ふと立ち止まって思い返すと、各地に家族会ができたり、低出生体重児向けに母子手帳のサブブック「リトルベビーハンドブック」が発行されたり、SNSで親同士が交流したりしているが、活発になったのはここ数年の流れだ。

 取材を進める中で、昨春神奈川県と県立こども医療センターが県内外の低出生体重児の保護者向けに実施したアンケートに、3千件近い意見が集まったと耳にした。家族会や医師らがSNSなどで発信し、広まっていったという。

 県の担当者によると、アンケートの結果は年度内に発行・配布するリトルベビーハンドブックの参考にしたり、今後保健師の研修に生かしたりするそうだ。

 県のリトルベビーハンドブックの作成検討会にも参加する家族会「かながわリトルベビーサークルpena(ペナ)」の代表・坂上彩さん(43)は、「当事者家族が声を届けるためにアンケートに答えようと呼びかけていました」と振り返る。

 2018年、妊娠24週で370グラムの長女(4)を出産した坂上さん。「こんなに早く小さく産んでしまったのは世界中で私だけじゃないかと思うほど追い詰められていた」と話す。

 孤独感に追い打ちをかけたの…

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