第16回PDFで届いた卒業証書 海を渡らずに終わった、コロナ下の「留学」
丘文奈
「上海もってくもの」
京都府に住む大学院生・垣尾和(のどか)さん(23)が見せてくれたのは、そんなタイトルのスマホのメモだ。
カップ麺、爪切り、歯ブラシ……。食品や日用品がずらりと並ぶ。
「これ、ずっと前から作ってました。現地のカップ麺は味が違うと聞いたので、日本のものを持って行こうと思って」
メモを記したのは2020年1月。中国・上海の華東師範大学の編入試験に合格し、留学生活に胸を躍らせていた。
これが無用のものになるなんて、考えもしなかった。
渡航できないまま卒業、現地に渡っても厳しい制限、さらにロックダウン……。中国留学を経験した3人が、それでも得たものとは?
電機メーカーで働く父親の仕事の都合で、5歳から12歳まで上海で過ごした。「第二のふるさと」と言える場所だった。語学力を身につけたいと、通っていた同志社大を中退して留学を決めた。
「上海はたくさんチャンスが…