「未来の耳」は「ながら聴き」にぴったり 奈良の研究者、仕組み発見
関西発の「未来の耳」は世界に広がるか――。奈良の研究者が世界で初めて発見した聴覚の仕組みが、イヤホンとして、活用され始めた。
昨秋には、大手メーカーからも製品が発売。関係者は、2025年の大阪・関西万博に向けてアピールを強化したい考えだ。
耳に「載せる」イヤホン その聴き心地は
奈良、京都、大阪にまたがり、研究機関やベンチャー企業などが集積するけいはんな学研都市。この一角で記者は、ボールのような形状のイヤホンを試した。
一般的なイヤホンのように耳の奥にぐっと入れるのではなく、耳穴にそっとのせるような感じ。
軽快な音楽を聴いてみた。音質の良いラジオを、そばで聞いているような音だ。音質はこもったり、明るすぎたりすることもなく、良い意味で普通に聞きやすい。周りで、テーブルに物が当たる音、話し声なども同時に聞き取れた。
耳が密閉されないので、周囲の音も自然と同時に聞こえる。周囲への音漏れもほとんどない。電車に乗っている時や、外を歩いている時などの「ながら聴き」にぴったりだ。
一体どういう仕組みなのか。
聴覚は一般的に、耳に入った空気の振動が鼓膜へ伝わり、中耳をへて、蝸牛(かぎゅう)という器官で神経の信号に変換され、脳に伝わって音として認識される。この経路は「気導」と呼ばれる。
一方、頭の骨の振動がそのまま蝸牛に伝わる経路「骨伝導」は第2の経路といわれ、イヤホンや補聴器といった製品も広く知られている。
記者が試したイヤホンで活躍するのは、第3の経路「軟骨」の振動だ。
第3の聴覚 発見当初は相手にされず
04年、奈良県立医科大の現学長で当時は教授だった細井裕司さん(74)=耳鼻咽喉(いんこう)科学=が発見し、第3の経路といわれる。耳を形づくっている軟骨の振動が耳の中に伝わる仕組みだ。
「『軟骨』という名称から骨…