「キングダム」作者の震災への思い 漫画は「ひと時、傷を癒やせる」
聞き手・構成=福岡龍一郎
中国の春秋戦国時代を舞台にした人気漫画「キングダム」の原画展「キングダム展―信―」(朝日新聞社など企画)が東北歴史博物館(宮城県多賀城市)で開かれている。作者の原泰久さん(47)に東日本大震災当時の思いや漫画の役割などについて聞いた。
――原画展は2年前から東京、福岡などを巡回。東北での開催に込める思いは?
震災の時、東京でキングダムの連載を抱えていました。「一度避難します」と言う漫画家さんもいて、自分はどうしようかと。
テレビでは津波のシーンが繰り返され、原発が爆発して、詳しい情報もなかなか分からない。東京でさえ手に入るものが減り、交通もまひした。いかに日ごろの生活が薄い氷の上にあったのか。簡単に消し飛ぶんだと強烈に思いました。
漫画を描いている場合なのかという葛藤がありました。災害が起こったときにはまずエンターテインメントから切り落とされる。食料や医療が重要で、漫画はなくても生活できる。
師匠の井上雄彦先生(「SLAM DUNK」「バガボンド」など)にその葛藤を話しました。
井上先生は「東北でも楽しみ…