日々の暮らしにどう影響する?身近な分野から県予算を紹介
【千葉】県の2023年度当初予算案が決まった。日々の暮らしなどにはどのように影響するのだろうか。身近な分野を中心に予算を紹介する。(予算額は万円未満を切り捨て)(相江智也、田中久稔)
教育
小学5年向けの算数の専科教員として、モデル校3校に塾講師を派遣し、児童の学力アップと教員の指導力向上を目指す。小学校80校に、算数・理科の指導力のある退職教員らを非常勤講師として配置。体育と図画工作でも、60校に専門性のある教員らを置く。
県立高校の授業で、ICT(情報通信技術)を効果的に活用するため、ウェブサイト作りなどの実践的な課題に取り組む教材を導入する。ICT教育の専門人材がモデル校8校を巡回し、授業の支援や改善の提案をする。
社会に出た人が学び直す「リカレント教育」を推進するためのオンライン講座を実施するほか、経済団体や大学、県などによる協議会を設立し、課題やニーズを共有する。
深刻な教員不足の解消に向け、人材サービス会社と連携したプロモーション活動を実施。教員に興味のある高校生や教職を学ぶ大学生らにも働きかける。
教員の長時間労働の解消のため、民間企業による、学校の業務改善に向けた調査をする。部活動の地域移行に向け、市町村や県立中学校で実証調査をする。
また、教員による性暴力防止に向け、外部専門家による、被害を受けた児童生徒らへの聞き取り調査の体制を構築。外部専門家を招いた講演会や研修を開き、不祥事の発生防止につなげる。
《主な事業》
・小学校への専科非常勤講師配置(4億600万円)
・デジタル人材育成事業(3314万円)
・教員の多忙化対策の推進(4億8200万円)
・教員による児童生徒への性暴力対策(449万円)
医療・福祉
新型コロナ感染症対策を継続する。患者受け入れのための病床や宿泊施設の確保、自宅療養者の支援、ワクチン接種体制の確保に取り組む。感染症法上の分類見直しなど今後の動向も念頭に、半年分を計上した。
医療の提供をめぐっては、地域医療を支える医師や看護師を確保するため、県内医療機関に一定期間勤務することで返済が免除される修学資金を貸し付ける。若手医師のキャリア形成や、産科医・女性医師の就労も支援。通院の負担が大きい発達障害児らを対象にオンライン診療のモデル事業も実施する。
がん患者の生活の質(QOL)の向上を図るため、医療用ウィッグなどの購入費を補助。若年末期がん患者の在宅療養も支える。
高齢者・障害者福祉では、特別養護老人ホームなどの施設整備に県単独で助成する。介護事業所の業務効率化やサービス向上のため、ICTや介護ロボットの導入を支援。医療的ケア児を支えるため、看護師の配置や短期入所事業所の開設を支援する。
《主な事業》
・コロナ患者受け入れのための空床確保(473億3700万円)
・軽症者のための宿泊施設確保(167億6千万円)・自宅療養者支援(32億6800万円)
・医師確保(10億3040万円)
・発達障害児らのためのオンライン診療推進モデル事業(400万円)
・介護事業所におけるICT・ロボット導入支援(2億7100万円)
・医療的ケア児らに対する支援(1億6919万円)
子育て
これまでのハード整備からソフトの充実へと施策をシフトさせ、保育の質の向上などに取り組んでいく。
屋外での体験活動に力を入れた「自然保育」に取り組む幼稚園や保育所などを県が認証し支援する制度を新設。また、遊びを通じて科学的な考え方を身につける保育を実践するためのアドバイザーを派遣する。送迎用バスへの安全装置や登園管理システムを導入する際の補助は継続する。
少子化対策では、結婚から出産、育児までの「切れ目ない支援」を目指し、高校生や新婚家庭を対象にしたセミナーを開く。市町村が新婚家庭の支援をする際に、県が経費の一部を負担する取り組みを始める。
子ども医療費助成については、8月から制度を拡充し、自己負担の上限額(通院の場合、月5回を超えた分は無料)を導入する。
また、児童虐待の防止に向け、児童相談所の職員の確保のために専用のホームページを新設する。印旛と東葛飾に26年度開設予定の児童相談所の実施設計や、柏と銚子の児童相談所の建て替えに向けた実施設計などを進める。
家族の介護などで十分に教育を受けられない「ヤングケアラー」について、当事者や関係機関からの相談を受ける窓口をつくり、支援につなげる。
《主な事業》
・保育の充実に向けた取り組みの推進(2440万円)
・地域少子化対策重点推進事業(2億1963万円)
・子ども医療費助成(68億円)
・児童相談所の機能強化(9億8689万円)
・ヤングケアラー支援体制強化(2145万円)
観光
コロナでの入国制限がなくなり、インバウンド誘致に力を入れる。台湾やタイ、マレーシアなどでの観光展に出展するほか、国内での商談会に参加して海外バイヤーと接触し、県内観光を含めた旅行商品づくりにつなげる。また、教育旅行が盛んな台湾やマレーシアの教員らが集まる説明会や商談会で、千葉での体験プログラムや生徒同士が交流できる学校についての情報を提供する。
観光地でテレワークをしながら休暇を楽しむ「ワーケーション」で、企業の受け入れを進めるモニターツアーを九十九里地域などで開く。PR動画やリーフレットなどを作成する。
関西や中京圏からの修学旅行などの誘致を進めるため、観光業者がSDGs(持続可能な開発目標)の学習を取り入れた体験プログラムづくりをする際の支援をする。
《主な事業》
・外国人向けプロモーション(5039万円)
・訪日教育旅行誘致(4063万円)
・ワーケーション受け入れ促進事業(7770万円)
・教育旅行SDGs体験プログラム造成事業(500万円)
農林水産
生産力の向上や省力化を図るため、ICTなどスマート技術の活用を進める。国内外で需要が急拡大し、供給不足が問題化しているサツマイモの生産・流通態勢を強化する目的から、貯蔵庫など施設の整備を補助する。廃プラスチックの排出量削減などをめざし、土壌の微生物によって分解される生分解性資材の導入を支援する。
イノシシなど野生鳥獣による被害を防ぐため、捕獲事業や防護柵の設置に助成。担い手の確保につなげるため、捕獲を体験したり、ふるさと納税を通じて参加したりする「(仮称)県有害鳥獣捕獲協力隊」も結成する。
《主な事業》
・農林水産業におけるスマート化の推進(9859万円)
・さつまいも生産拡大緊急プロジェクト(1億円)
・野生鳥獣総合対策(6億9276万円)
地域振興
成田空港周辺やかずさアカデミアパーク、幕張新都心、柏の葉、アクアライン着岸地周辺など、産業の誘致や創出が期待される地域の特性や事業者の動向を調査する。京葉臨海コンビナートのカーボンニュートラル化を進めるため、立地企業などと共に協議会を運営。太平洋沿岸地域で導入が検討される洋上風力発電を地域経済の活性化につなげる基礎調査をする。
テレワークが浸透するなか、2地域居住を含む県内への移住・定住を促す目的でSNSなどでの情報発信を継続。市町村の関連情報をまとめたポータルサイトもつくる。千葉県誕生150周年記念として、県民参加型の行事を開催するほか、オリエンタルランドと連携した文化イベント、記念コンサート、中央博物館の特別展などを展開する。
《主な事業》
・新たな産業・地域づくりに関する基礎調査(5千万円)
・カーボンニュートラルコンビナート事業(3千万円)
・移住・定住促進事業(4992万円)
インフラ
道路整備では、23年度中に銚子連絡道(横芝光町―匝瑳市間)や長生グリーンライン(長南町道―県道茂原大多喜線間)などが供用開始予定。圏央道の大栄―横芝間は24年度開通に向けて整備を進め、通学路の安全対策にも取り組む。
物流拠点としての港湾機能の強化に向け、千葉港千葉中央地区埠頭(ふとう)の再編整備をする。銚子市沖の洋上風力発電の受け入れのため、建設やメンテナンスに使う名洗港の改修と館山港の多目的桟橋の改良を進める。
道路などのインフラを支える建設業の大切さや魅力を小中校生に伝えるため、仮想空間で建築を楽しむゲーム「マインクラフト」を使ったコンテストを開く。
《主な事業》
・道路ネットワーク事業(748億2815万円)
・港湾事業(63億9861万円)
・建設業の魅力発信推進事業(1300万円)
雇用
中小企業の人手不足に対応するための支援を拡充する。
「ジョブカフェちば」で工業高校や高等技術専門校とのマッチングを促進する体制を強化。合同企業説明会や交流会、職場体験なども開く。また、高等技術専門校の入校を促進するため、中学生や高校生にものづくりの魅力などを伝えるパンフレットを作成する。
「ジョブサポートセンター」では、在宅ワークを希望する人への就業支援などのニーズに対応するための取り組みを充実させる。働き方改革やテレワークの導入に取り組む中小企業にアドバイザーを派遣するほか、特設ホームページでテレワークのできる施設を紹介するなどの情報発信にも力を入れる。
《主な事業》
・ジョブカフェちば事業(1億4764万円)
・高等技術専門校の入校促進に向けた取り組み(9億9599万円)
・ジョブサポートセンター事業(9831万円)
・「新しい働き方」推進事業(5千万円)
防災・安全
市町村向けの運用が始まった津波浸水予測システムを活用し、関係市町と連携した防災訓練をする。消防ヘリコプターによる広域的な情報収集態勢もつくる。
2019年の台風21号に伴う大雨で氾濫(はんらん)した一宮川流域の浸水対策として、河道拡幅や調整池の設置を進める。今後に建て替えや改修時期を迎える県庁舎の整備方法も検討する。
特殊詐欺の防止対策として、高齢者安全対策アドバイザーを配置、戸別訪問による防犯指導をする。改正飲酒運転根絶条例で飲食店への罰則が設けられたのを受け、広報を強化する。
《主な事業》
・防災行政無線、消防救急無線再整備(22億3599万円)
・「電話de詐欺」被害防止広報・啓発(1億2784万円)
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