「先に私たちが死んだら…」交通事故の後遺症が家族に突きつける現実
角拓哉 石垣明真
北海道稚内市の稚内港を見下ろす高台にある北門神社。80段の階段は、以前は苦ではなかった。今は違う。
「体力が落ちたなあ。いつまで、あの子のそばにいられるんだろう」
市内に住む米内隆俊さん(65)がここによく来るようになったのは20年前。長男の隆輔さん(25)が交通事故に遭ったのがきっかけだった。隆輔さんはあの日から目を覚ましていない。
「ねえパパ、学校まで車で送ってよ」
「だめ。きょうは天気がいいから歩いていきな」
2003年6月20日朝、隆俊さんは当時小学1年の隆輔さんにせがまれた。学校まで2キロ。雨の日は車で送ることもあったが、なるべく歩かせて体力をつけさせたいと思っていた。
隆輔さんは午前7時50分ごろ、稚内市緑3丁目の横断歩道を歩いて渡っていて車にはねられた。原因は運転手のよそ見運転だった。
緊急手術で一命をとりとめた…