第1回本震が襲った熊本城 立ち尽くす職員、そして見た「奇跡の一本石垣」
杉浦奈実
長い、長い揺れだった。城は大丈夫だろうか……。
2016年4月14日、午後9時26分。
熊本市にある嘉村哲也さん(37)の自宅は、震度6弱の激しい揺れに襲われた。自宅はさいわい無事だったが、嘉村さんが気になったのは、国内屈指の名城で、地域の誇りでもある熊本城のことだった。
熊本市職員である嘉村さんの肩書は、熊本城調査研究センターの文化財保護主任主事(当時は主事)。城の学術的な調査などを担い、適切な保存につなげるのが役目だ。この年の4月に異動してきたばかりだった。
翌15日、同僚とともに半日かけて城内の状況を確認した。石垣が6カ所、崩れていた。
「こんなに壊れるのか。修理が大変そうだな」
ただ、すぐに対応できることは多くない。その日の夕方から、市内の避難所運営の応援に回った。
4月16日午前1時25分。
避難所が寝静まり、やっと一息つこうとコンビニにいたところ、再び大きな揺れに襲われた。棚から飛び出る商品。慌てて外に飛び出した。
これが、「本震」だった。
変わり果てた城 涙し手を合わせる人々
熊本市内でも各地で家屋が崩…