第7回ブランド鴨を襲った鳥インフルの波 赤字2千万円の農家が求めること
大野晴香
1月中旬の昼。愛知県豊橋市の小高い丘に立つと、細長い平屋2棟が見渡せる。風に漂い、ふんのような香りが、鼻をかすめる。
だが、あの鳴き声は聞こえない。
「アイガモは、鳴くと大きな声を出すからね……」
アイガモの世話をしてきた男性は、空っぽの鶏舎を見て、つぶやいた。
愛知県特産の「あいち鴨」
昨年末まで、「鳥市精肉店」(同市)が運営するこの鶏舎には、愛知県特産の「あいち鴨(がも)」として出荷予定のアイガモが飼育されていた。市川勝丸社長(41)が名付け、2016年に商標登録もされた「あいち鴨」は、臭みが少なく、食べやすさが売りだった。
昨年12月4日朝。
豊橋市の養鶏場で、鶏が死ぬ例が相次いでいると県に連絡が入った。県はただちに鳥インフルエンザの検査を実施。この日のうちに市川さんに連絡があった。
全国で猛威を振るう鳥インフルエンザ。愛知県ではアイガモと鶏、あわせて約33万羽が殺処分となりました。記事の中では、殺処分せざるを得なかったアイガモ生産者の苦悩と、行政に期待することは何か、紹介します。
「明日の分から、出荷を止め…