雷さんこちら、レーザーの方へ… 「かなりの距離」の誘導実験に成功
雷による被害を減らそうと、レーザーを使ってその通り道を変える技術の実証実験に、スイスなどの研究チームが成功した。ジグザグに進むことの多い稲光が、レーザーの直線に寄り添うようにまっすぐ進む様子を、ハイスピードカメラがとらえた。
出力を高めたレーザーを空中に放出すると、本来は電気を通しにくい空気の分子が電離し、電流が通りやすい誘導路ができる。
スイス・ジュネーブ大などのチームは、観光地として知られる同国のセンティス山(標高2502メートル)山頂にあり、年間100回も落雷に見舞われる通信塔に注目。1秒間に1千回、レーザー光を照射できる設備を隣に設置し、2021年夏に誘導の実証実験に挑んだ。
計6時間の雷雨の間、高速カメラなどで記録を続けた結果、レーザー照射中に4回の雷があり、うち1回について、レーザーの直線に沿うように走る、鮮明な稲光の撮影に成功した。
雷の光は地面側から上向きに走る場合があり、今回の撮影でも、秒速数百キロで進む稲光が、通信塔の頂点から上空に走り抜けた。
稲光は、塔の頂点から空中に出た直後、すぐそばを斜めに走るレーザーの軌道を追うようにまっすぐに進んだ。約50メートル直進した後は、レーザーからぐにゃりと方向を変え、ジグザグと蛇行して上昇していった。
一方でレーザー照射のない時間の稲光の写真には、塔の頂点から出た直後に蛇行したり、分岐したりする様子がうつっていた。
こうした結果からチームは「かなりの距離にわたって雷を誘導できることを実証できた」と結論づけた。
落雷は世界で年間4千人以上…