壺の中で熟成、深まる琥珀色 料理の可能性広げる黒酢の実力
野崎健太
海を望む斜面地に高さ60センチほど、約50リットルが入る壺が所狭しと並ぶ。壺畑と呼ばれる風景だ。鹿児島県霧島市福山町では、冬は暖かく夏は比較的涼しい気候と豊富な湧き水を生かし、約200年前から壺で仕込む黒酢が造られてきた。
蔵元のひとつ、福山黒酢の壺畑には約2万個が並ぶ。原料は玄米、米麴(こうじ)、水のみ。壺の中で自然発酵し、熟成が進むと角が取れてまろやかな味になり、琥珀(こはく)色の深みが増していく。「黒酢」の名の由来だ。酵母の働きでコクのある味の元になるアミノ酸が増えるのだという。同社のブランド「桷志田(かくいだ)」は3年以上熟成した黒酢を使う。
壺畑のそばにあるレストラン「黒酢の郷 桷志田」は2005年オープン。総料理長の中村誠治さん(44)は「ふだん使いしてもらうには料理を味わってもらうのが一番」と語る。
前菜や小鉢、メイン料理がつ…