エネルギー地産地消・脱炭素へ地域新電力 茨城県稲敷市が民間と設立

福田祥史
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 茨城県稲敷市と民間企業による地域新電力会社が26日、設立された。自治体が出資する新電力は県内初。市内の発電施設などから電力を調達して公共施設に供給し、エネルギーの地産地消や脱炭素化、地域の防災力強化を目指すが、電力価格の高騰で、厳しい経営環境の中でのスタートになった。

 新電力の設立に合わせ、市は同日、「2050年二酸化炭素実質排出ゼロを目指す」とする「ゼロカーボンシティー宣言」をした。

 新電力は「株式会社いなしきエナジー」。資本金870万円で、市が500万円、これまでに全国15社の自治体新電力に携わるパシフィックパワー(東京)が260万円、常陽銀行と筑波銀行が各40万円、県信用組合が30万円を出資。筧信太郎市長が社長に就いた。

 設立発表の記者会見で、筧市長は「官民連携のもと、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に寄与していく」と意義を語った。市は新電力によって災害時に避難所などの電源確保が可能になるなど、防災上の重要性も強調している。

 当面は、市内にある江戸崎地方衛生土木組合のごみ処理施設で発電した電力の余剰分を購入するほか、市内の太陽光発電施設からの買い取りも進める。また、自前の電源として、市役所など公共施設の建物屋上などに順次、太陽光発電設備を設置する。

 仕入れた電力は、学校や公民館など市内53カ所の公共施設のうち9割に供給する。これにより、公共施設の電気代は従来より2~3%削減できる。一般家庭や事務所への販売も視野に入れるが、それぞれへ太陽光発電と蓄電池を設置する形になるという。

 事業計画では、今年10月に電力供給を始め、当初から黒字で、28年度には2327万円の営業利益があるとし、利益は主要産業である農業の活性化や子育て支援など地域貢献事業に充てるとしている。

 課題は電力価格だ。需要に対し不足する分は卸電力市場から調達するが、一昨年来、高騰が続いている。収支計画では市場調達価格を高めに見積もってはいるが、仕入れ価格が販売価格を上回る「逆ざや」のリスクも指摘している。

 新会社の代表取締役に就任したパシフィックパワーの宮川稔子・経営管理部長は「市場からの調達比率を下げて、(相対取引の)固定価格の電源をいかに増やすかが重要」と述べた。(福田祥史)

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