中学生が作ったロボットが世界大会優勝 祖母への思いやりがひらめき

新谷千布美
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 昨年11月にドイツであったロボットの国際的なコンテスト「ワールド・ロボット・オリンピアード」(WRO)で、大阪市の中学校の3年生2人が金メダルを受賞した。WROで日本の中学生が優勝したのは、2014年以来8年ぶりという。

 世界1位に輝いたのは、追手門学院大手前中学校(大阪市中央区)の3年生、水谷風花さん(15)と古本美月さん(同)。部活動としてロボット作りなどに取り組む「ロボットサイエンス部」に所属している。

 WROは、8~19歳を対象としたロボコン。年齢や課題に応じ、8部門に分かれている。例年、世界85以上の国と地域で開かれており、7万5千人以上が参加。国や地域の代表に選ばれたチームは、毎年11月にある国際大会へ進む。

 2人が参加したのは、テーマに沿ったロボットを自由に開発する「フューチャー・イノベーターズ」のジュニア部門(11~15歳)。22年大会は「マイ ロボット、マイ フレンド」がテーマで、医療、災害、家事支援のいずれかの分野における社会課題を解決するロボットの開発を競った。

 大会出場を目指し、昨年1月ごろ、2人はどんなロボットを作ろうか話し合った。その中で古本さんの頭に思い浮かんだのは、母方の祖母(75)だった。

9カ月にわたる試行錯誤

 祖母には、40代の頃からリウマチの持病がある。3年前には悪性リンパ腫を患い、入院。現在、約10種類の薬が必要だが、手が動かしづらいため、包装シートから錠剤を出すのに苦労している。

 医療現場などで薬を代わりに取り出してくれるロボットを作れないか。2人は部の顧問の福田哲也教諭(57)にも相談。「人に寄り添うロボットにしよう」というアドバイスを受け、構想を練り上げた。

 患者の声を認識するアプリの開発を古本さんが担当し、薬を取り出す機械部分の製作を水谷さんが担当。約9カ月にわたり、試行錯誤を繰り返した。

 完成したのは、校章の桜をモチーフにした大きな耳を持ち、チャーミングな表情が顔部分の画面に表示されるロボット。「仲間」「友だち」を意味する英語から「パル(Pal)」と名付けた。

 パルはまず、患者に「今日の心の天気はどう?」と話しかける。「晴れ」「曇り」「雨」のいずれかを答えると、音声認識アプリが識別し、「誰かに相談してみましょう」などと異なる答えを返す。回答は家族のスマートフォンとも共有。古本さんが祖母の入院中、様子が気になった経験から盛り込んだ機能だ。

 さらにパルは、あらかじめ投入しておいた種類の異なる錠剤を、画像認識ソフトで識別。機械のアームが、てこの原理で包装シートから薬だけを押し出してくれ、「薬の準備ができました」と報告してくれる。

 動く様子は、イラストを交えた英語の動画(https://youtu.be/XSRL8_AkhPs別ウインドウで開きます)にまとめた。アイデアや機能性が評価され、昨年8月の日本大会で優勝。同11月の国際大会でも最高得点を得た。

 古本さんは「多くの人に評価してもらい、祖母だけの課題じゃないことがわかった」と笑顔。水谷さんは、機械で錠剤を押し出すことが難しく、てこの原理にたどり着くまでが長かったと振り返り、「世界で認められてうれしい。将来は機械関係の仕事がしたい」と語った。(新谷千布美)

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