西本智実さんが平和を願うタクト 浦上天主堂でコンサート
世界的な指揮者の西本智実さんが参加した「響け! 平和の鐘プレミアムコンサート」が25日、長崎市の浦上天主堂であった。日が暮れてステンドグラスが醸し出す荘厳な雰囲気の天主堂。バチカンの鐘、そして浦上天主堂の鐘を録音した音が会場に響き、平和を願うコンサートの幕が開くと、約260人の観客は演奏に聴き入っていた。
2019年秋のローマ教皇来日を契機に企画された「バチカンと日本 100年プロジェクト」(角川文化振興財団主催、朝日新聞社共催)の一環。
長崎・平戸の潜伏キリシタンをルーツに持つ西本さんは、13年にバチカン国際音楽祭に招聘(しょうへい)されて以来、ローマ・カトリック教会の主聖堂サン・ピエトロ大聖堂で毎年のようにコンサートをしている。そうした縁もあり、プロジェクトのアンバサダーを務める。
広島・長崎への原爆投下から70年になる15年には、同聖堂の音楽祭オープニングのミサでも、自らが芸術監督をするオーケストラと合唱団を率いて演奏。犠牲者への追悼メッセージを発信した。
この日は、長崎・生月島のオラショの原曲と伝わる「O gloriosa Domina」、パッヘルベルの「カノン」、ヘンデル作曲オラトリオ「メサイア」のハレルヤ・コーラスを演奏した。
西本さんは、浦上天主堂の印象を「とてもあたたかい音色」といい、「かつて、世界に扉を開いた長崎。厳しい歴史から復興し、今また世界に大きな扉を開けていると思うと胸がじんとする。言葉にならない思いを伝えたい」と話していた。
長崎県諫早市から来た介護福祉士の上田泰子さん(45)は「すばらしかった。ハレルヤを聴きながら、誰かのために祈ることって人の心を強くするんですね」と興奮冷めやらぬ様子で感想を語った。(藤原泰子)
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