「キングダム」作者が震災語る 東北歴史博物館で漫画の原画展を開催
中国の春秋戦国時代を舞台にした人気漫画「キングダム」の原画展「キングダム展―信―」(朝日新聞社など企画)が東北歴史博物館(宮城県多賀城市)で開かれている。12年前の東日本大震災で、作者の原泰久さん(47)は「漫画を描いている場合なのか」と葛藤を抱えた。非常時に漫画の果たす役割とは。
2006年から連載が始まり、コミックスの累計発行部数は9500万部超。会場には約400枚の原画が掲げられ、主人公の信(しん)や人気のキャラ王騎の巨大な描き下ろしも並ぶ。展示された原画やセリフを追ううちに、物語が一通り分かる構成だ。
震災当時、東京で連載を抱えていた原さんは、テレビが繰り返し流す津波や原発事故の映像に、「日ごろの生活がいかに薄い氷の上にあったか。簡単に消し飛ぶんだと強烈に思った」。
井上雄彦さん(「SLAM DUNK」「バガボンド」など)に漫画を描き続ける葛藤を話した時、「東北でも楽しみにしている人が必ずいる」と言われたのが連載を続ける後押しになったと明かす。
「最初に必要なくなるのが漫画などの娯楽だ」との思いは、「最悪の時期を過ぎると、ほんのひと時でも傷を癒やしたり、寄り添ったりできる」との考えに変わった。「大変な状況でこそ、実はエンターテインメントは重要なように思います」
展示は3月12日まで。月曜休館で午前9時半~午後5時(入場は午後4時半まで)。一般1500円、中高校生は1千円、小学生500円。期間中、一部展示替えがある。問い合わせは同館(022・368・0106)。(福岡龍一郎)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。