三度目の正直・過疎の街の希望・13人の躍進…21世紀枠3校の素顔
三度目の正直、過疎化が進む街の希望、わずか13人の躍進――。
第95回記念選抜高校野球大会の21世紀枠に選ばれた3校はいずれも特色があり、困難を克服しようとする姿勢が評価された。
石橋(栃木)は、宇都宮市の南の下野(しもつけ)市にある。
21世紀枠の関東・東京地区候補に選ばれること3度目で、ようやく吉報が届いた。
昨年度は国公立大に現役130人が合格した県立の進学校だ。
野球部は平日2時間の練習でグラウンドも他部と共用。制限の多い環境ながら、2016年秋と20年秋の県大会で準優勝し、21世紀枠候補に選出された。作新学院や国学院栃木といった私学の強豪と互角に戦ってきた。
昨秋も新型コロナウイルスの影響で体調不良者が出るなか、県ベスト4と安定した成績を残し、勉強と野球の両立を果たしている。
地域貢献活動にも取り組む。毎年12月にはNPO法人「野球医療サポート栃木」と協力し、地域の小学生を対象に肩ひじ検診を兼ねた野球教室を開催している。
部員たちも検診を受け、けがの予防や早期発見、大けがには至らせないリハビリ体制の充実にも取り組んでいるという。
「長く野球を続けてもらう」という狙いを持って障害予防に高い意識を持ち、先駆的な取り組みにつなげている点の評価が高かった。
ブリの街から、30年ぶりの甲子園
氷見(ひみ)(富山)は氷見高と旧有磯(ありそ)高の統合で10年に誕生した。統合前の氷見が1965年夏の第47回全国選手権大会と93年春の第65回選抜大会に出場しており、30年ぶりの甲子園となる。
昨夏の全国選手権富山大会では、決勝で高岡商と対戦。九回2死、2ストライクまでリードしながら、逆転負けを喫し、「あと1球」で甲子園を逃した。
秋も選手17人ながら県大会を制し、北信越大会でも1勝を挙げた実力校だ。
選手が少ないことから各選手が複数ポジションを兼務、多角的に経験することによって、将来の指導者としても育てるという未来志向の取り組みも評価された。
ブリの特産で有名な氷見市は人口減が課題で、民間の研究機関によるリストで消滅可能性都市の一つに挙げられている。
市内唯一の高校で、野球部の練習試合には、子どもからお年寄りまで幅広いファンが応援に訪れるなど、地元で愛されている。
瀬戸内寂聴さんの母校
1902年創立の城東は徳島県屈指の進学校だ。
2021年に亡くなった作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんらが輩出している。
部員はわずか13人(女子マネジャー1人を含む)ながら、一人ひとりが「主体的に考える野球」をテーマに、練習メニューの多くを選手が考えている。
打撃練習が制限されるため、バントのみでの得点をめざし、走塁感覚を磨く「バントゲーム」が象徴的な練習だ。
試合でもケースに応じて「ノーサイン野球」を実践するという。
部員が少ないなか、女子マネジャーの貢献度も大きい。運動経験はないが、手のマメをつぶしながらノックを打ってきたという。
逆境に負けず、昨夏の徳島大会、秋の県大会はともに4強入りを果たした。
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。