ベレーザ→INAC移籍 両クラブ知る守護神、ギャップと共感の間で

照屋健
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 女子サッカーの日本一を決める皇后杯の決勝が28日午後3時、大阪・ヨドコウ桜スタジアムでキックオフされる。日テレ東京ヴェルディベレーザとINAC神戸レオネッサが対戦する。ベレーザに7年在籍し、2021年にINACに移籍した日本代表(なでしこジャパン)GK山下杏也加(あやか、27)が、大一番への思いを語った。

 山下の口ぶりは落ち着いていた。

 「トーナメントが決まった時から、ベレーザが上がってくるとは思っていた。若手が少しずつ力をつけてきて(日本代表のFW植木理子ら)前線の3人は強烈。リーグでの戦いぶりを見ていても、優勝候補だろうなと」

 自身は東京・村田女子高からベレーザへ。岩清水梓阪口夢穂ら2011年ワールドカップ(W杯)を制した面々と一緒に練習した。当時はまだ、働きながらサッカーをするのが当たり前だった時代。プレーできる喜びが、どの選手にもあふれていた。

 「ミスをしちゃいけないという空気感もあったし、この選手たちを超えていかなければ自分はなでしこに入れない、と思ってやっていた」

 WEリーグの前身・なでしこリーグでは5連覇を達成。ただ、ベテラン勢が抜け、徐々にメンバーが入れ替わるなか、違和感も生まれたという。

 「海外に移籍する選手もいて、メンバーが抜けたのもあって、クラブとして若手を育成していく空気感があって。優勝、結果だけを求めていた自分にとって、チームが向かっている方向にギャップを感じた」

 自身のブログで女子サッカーの環境について書くと、反響があった。練習している天然芝のグラウンドが、夏場は駐車場になってラインが見えにくくなり、芝が硬くなった。コロナ下、男子と共同で使うジムの時間も制限が多かったという。

 「どうしたら自分たちの環境を変えられるか、と考えていて。それには結果しかないと思って頑張っていた。ただ、何連覇しても、何冠をとっても、結局、何も変わらなかった。自分は何のために、こんなに頑張っているんだろう、という思いもあった」

 INACから声をかけられたのは、そんな時。「勝ち続けられる選手がほしい」という言葉に共感した。広いジムを使えるなど環境面も魅力的だったという。

 「勝敗にこだわるという部分は、外から見ていた時も、中に入ってからも(ベレーザとの)すごく大きな違いだと感じた。自分と同じ価値観で、優勝を目指すチームでできるのは大きかった」

 皇后杯の決勝は注目度も高まる。だからこそ、思うことがある。

 「決勝だけを見てくれる人もいる。もしかしたら、新たなスポンサーがついてくれる可能性もある。そういう試合で良いプレーを見せたい」

 INACとしては4年ぶりの決勝の舞台。勝って、古巣の目の前でカップを掲げる姿を思い描く。(照屋健)

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