沖縄核密約シナリオ 密約否定した有識者委のメンバーらはどう考える

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編集委員・藤田直央
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 沖縄の1972年返還で合意する69年の日米首脳会談に備え、佐藤栄作首相の密使を務めた国際政治学者・若泉敬氏が書いたとみられる首相向けシナリオが見つかった。沖縄の米軍基地にあった核兵器の緊急時の再持ち込みをニクソン大統領と合意した上で伏せる運びが肝だが、かつて外務省の有識者委員会はこの合意を「密約とは言えない」と判断した。いまそのメンバーらはどう考えるのか。

 有識者委員会は民主党政権下の2009~10年に四つの日米密約を調べた。密約を「国民に知らされず、公表されている合意と異なる重要な内容(追加的に重要な義務や負担を引き受ける内容)を持つ合意」と定義。若泉氏が94年の著書で明かした核再持ち込みの合意文書である「合意議事録」は密約でないとした。

 委員会の座長代理だった波多野澄雄・筑波大名誉教授は「密約の定義は納得できるものだったが、今回のシナリオ発見で改めて『核密約』の意味を考える必要性を感じた」と語る。

 シナリオは、会談で両首脳が沖縄の72年返還を表明する共同声明の書きぶりを詰めた後、合意議事録に署名する運びを示した上で、この文書を「絶対極秘扱」として会談後の口裏合わせまで要請。両首脳の署名がある文書は09年に佐藤首相の遺族が明かした。

 波多野氏はシナリオについて…

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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2023年1月30日16時37分 投稿
    【視点】

    三者三様。一般論として、自ら「××」の定義を行い、その定義に合致しなければ「××」にあたらないという主張では、多くの人は納得しないのではないか。この問題に限ったことではないが。

  • commentatorHeader
    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2023年1月30日7時33分 投稿
    【視点】

    書きました。  沖縄の1972年返還を合意した69年の日米首脳会談の裏で、返還後の沖縄に米国が緊急時に核兵器を再び持ち込むことを認めた両首脳の合意文書について、「密約とは言えない」という見方があります。この記事に出てくる3人の学者がコアメ