第2回最新技術で挑む石垣復活 壁となった「武者返し」、教授が導いた道筋
杉浦奈実
台形のような形、細長いスタイル、一部がひしゃげたもの……。
ひとつひとつ微妙にかたちが違う、薄灰色の塊。素人目にはどれも似たり寄ったりに見える石の形を見比べ、もとの画像をもとにあてはめていく。
難度の高いジグソーパズルのようにも見えるこの作業が、熊本城の復興で大きなカギを握っている。
2016年の熊本地震で、熊本市の中心にそびえる熊本城の多くの石垣が崩れ落ちた。
よく知られているのが、たった一列の石垣で建物を支え、「奇跡の一本石垣」と呼ばれた飯田丸五階櫓(やぐら)だ。
地震前まで櫓を支えていた石垣の石材のうち、表面にある「築石(つきいし)」だけで約500石が崩落した。
文化財の石垣を直すとき、こうした石はもともとあった場所にそっくり戻すのが原則だ。
熊本城全体でみると、築石だけでも積み直さなくてはいけないものは10万石にのぼるとみられている。落ちてしまった石が地震前にどこにあったのかを、どう割り出していくのか――。
膨大な作業、テクノロジーで挑んだ熊本大教授
作業は基本的に、崩れる前の…