第3回石垣の伝統守りながら耐震性確保を…失敗続きの実験、見いだした秘策
杉浦奈実
2016年の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城の石垣の復旧工事には、数多くの業者が参加している。
国内のゼネコン大手、大林組もその一つだ。
大林組の生産技術本部・技術第二部技術第四課長の川本卓人さん(41)はふだん、道路わきののり面などを相手に、安定対策を検討している。「業務内容が近い」という理由で声がかかったという。
文化財である石垣は基本的に、地震前の状態に戻そうと努力が続けられている。ただ、たんに元に戻せば済む話ではない。
熊本城は観光の目玉でもあり、連日多くの人が訪れる。再び大きな地震がきても崩れて被害者を出さないよう、耐震性を高めることも求められる。
伝統の工法で積み上げられる石垣の復旧にあたって、最小限の現代技術でどうやって安全を確保するのか。
川本さんら大林組の技術者たちは、そんな難題に挑むことになった。
初めての挑戦、繰り返した試行錯誤
のり面には詳しいとはいえ…