第5回「石の声を聞く」次世代に繫ぐ極意 石垣職人が技術を磨く大事な理由
杉浦奈実
ごろごろと無造作に転がっていた石が、それぞれの位置を得て、壁になっていく。
セメントも何も使わない。ただ、積むだけ。職人たちの真剣なまなざしの下、美しい石垣が足元から立ち上がった。
昨年10月末、大津市の琵琶湖岸に、全国から石垣職人が集まった。文化財に指定されている城などの石垣の保存技術を高め、後世に受け継ぐことをめざす「文化財石垣保存技術協議会」の研修会だ。
計8日かけて、いちから高さ1メートル強の「野面積み」の石垣を築く。ほとんど加工しない自然石を積み上げる伝統的な技法だ。
参加したのは、それぞれの職場で中堅以上の職人9人。実は、現代ではまったく新しく石垣を積むことは珍しくなっている。職人たちは修理などの現場は経験していても、新規はなじみがないことも多い。
戦国時代から活躍する石垣職人集団「穴太衆」
壊れたり、変形したりした石…