東京の主要地区で半世紀以上続いてきた二つの百貨店が、31日に営業を終了する。渋谷の東急百貨店本店と立川高島屋。街のシンボルだった店の撤退に、利用客からは惜しむ声が上がる。人々のニーズや街の変化に合わせ、百貨店のあり方も変わってきている。
東急百貨店本店は31日、午前10時半から最後の営業を始めた。店の前には開店前から長蛇の列ができ、建物の写真を撮る人の姿もあった。55年間、渋谷のシンボルだった東急本店の思い出を残そうという人たちが集まってきている。
東急本店は1967年11月、渋谷駅から約500メートル離れた区立小学校の跡地にオープンした。地上8階地下3階建て。高級住宅街である松濤に近く、ブランド品をそろえた。
若者の街・渋谷で、顧客の中心は50~70代。「『山の手の洗練』を体現していた場所だった」。入社から33年間、ずっと本店で勤務する外商事業部の加藤淳子さん(59)は言う。
加藤さんは、本店に「デパ地下」ができた1990年に入社した。地元・長野県の金融機関で勤務していたが、東京に憧れて25歳で上京。本店で働くことが決まると、「こんなに華やかな世界で働けるんだ」と胸が高鳴った。
服飾雑貨売り場で小物やハンドバッグの担当からキャリアをスタートし、婦人服の販売を経て、商品の知識や接客の基礎を培った。2004年からは新設されたコンシェルジュの一員として9年間、各階の売り場と連携して来店者をサポート。現在はお得意様の開拓などに取り組む。
「本店が持つ、ゆったりとした上質な雰囲気が大好きでした」と加藤さん。このまま定年まで働ければと思っていただけに、21年に閉店の知らせを聞いたときはショックだった。
華やかな都会の消費を支えてきた東京の二つの百貨店が撤退します。専門家は背景に、百貨店の「脱百貨店化」がある、と指摘します。どんな変化が起きているのでしょうか。
東急グループは渋谷で大規模…