「あきらめたら試合終了だよ」財政破綻の夕張市、会合で響いたせりふ

長谷川潤
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 「借金のまち」として知られた北海道夕張市に、財政破綻(はたん)後に建てられた拠点複合施設がある。

 その建設に向けて、検討チームの初会合が開かれたのは2016年7月のことだ。

 市職員や市議に加え、ボランティアや高校生が参加した会合では、ある人気漫画のせりふが飛びかった。

 「あきらめたら、そこで試合終了だよ」

 理想の施設を語り合ったものの、「でも、借金が」となったらしい。

 「私たちがあきらめたら、夕張終了だよ」

 そう笑い飛ばして議論は続いた。

 それから6年あまり。この施設に勤める市職員の一人が寺江和俊さん(61)だ。

 昨年3月に定年退職し、市教育委員会に再雇用された寺江さんは長年、要である総務課長を務めてきた。

 「借金を返すだけでいいのか。返し終わった時、そこに市民の幸せはあるのか」

 そんな葛藤を抱え続けてきた寺江さんの思いは、財政破綻後に計画したこの拠点複合施設に詰まっている。

 テニスコートほどの広さの多目的ホールを備えた施設は長い間、住民たちが待ち望んでいたものだったという。

 「ここではちょっとした発表会なんかもできるんですよ」

 そう、うれしそうに語る寺江さん。あきらめなかったからこその、笑顔だった。(長谷川潤)

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