制裁下のイランに紙幣の巨大壁画「意志で通貨守ろう」 市民に反発も
イランの首都テヘランに、現地通貨リアルの紙幣をモチーフにした約1200平方メートルの巨大壁画が出現した。政府系の広報組織などが制作し、「(通貨の)信用は意志にあり」とのスローガンが記されている。制裁下で下落し続けるリアルの価値を国民の意志の力で守ろうと呼びかける内容だが、市民からは「非現実的だ」と反発も出ている。
28日午前、買い物客が行き交うエンゲラブ(革命)広場。6階建てほどのビルの壁いっぱいに、1万リアル紙幣の図柄が描かれていた。本来の紙幣にはない工場労働者や、髪を隠す布「ヒジャブ」を着けた女性たち、少年らが描き加えられ、国民全体で制裁に立ち向かう姿勢を強調する内容だ。
革命防衛隊に近いファルス通信によると、政府系広報組織のイスラム宣伝機構などが最近のリアルの価値変動などを踏まえて制作したといい、国内最大の壁画だとしている。リアルの価値を維持するため、人々に「国民の力」に気づいてもらうことが狙いだという。
国内の経済悪化は深刻だ。イラン核合意から米トランプ政権(当時)が一方的に離脱した2018年、1ドルの相場は約4万リアルだった。離脱後に米国の対イラン制裁が復活するなどし、現在は1ドルあたり約44万リアルまで自国通貨の価値が下落している(いずれも実勢レート)。イラン政府統計局によると、前年の同じ期間と比較した昨年12月~今年1月のインフレ率は51・3%に上っている。
インターネット上には、壁画…
- 【解説】
イランのイスラム共和主義体制を支えていたテクノクラートを束ねられるような穏健派のロウハニや故ラフサンジャニのような人たちが体制から遠ざけられ、最高指導者ハメネイ師の後継者と目されているライーシ大統領を革命防衛隊と保守派の聖職者が支えるという