木材で炭素貯蔵、漆で脱プラ SDGsと共鳴する伝統工芸の広がり
2030 SDGs で変える
自然由来の材料を、大量にエネルギーを使わず、手作業で加工する伝統工芸は、SDGs(エスディージーズ)(持続可能な開発目標)が目指す調和の取れた社会づくりに重なります。ものづくりの現場では、SDGsと共鳴する試みも始まっています。挑戦する人たちを訪ねました。(編集委員・宮代栄一)
「これはミズナラですね。樹齢は200年ほどでしょうか」。北海道幌加内町(ほろかないちょう)にある北海道大学の雨龍(うりゅう)研究林。案内してくれた北大北方生物圏フィールド科学センターの吉田俊也教授(造林学)がつぶやいた。
トドマツ、アカエゾマツなどの針葉樹に、ミズナラなどの広葉樹が交じる天然の混交林。同大は研究で切り出す木材を2014年ごろから地元の企業に提供してきた。「天然のミズナラは希少。流通経路が把握できる点もいい」。同行したプレステージジャパン社の吉田安志・専務取締役の表情が輝いた。
「循環」を意識したものづくり 人生と地球環境を豊かに
家具ブランド「タイムアンドスタイル」の製造販売を行う同社が北海道東川町に工場を構えたのは2008年。以来、道内産などの原木からキャビネットやテーブルなどを作る。端材(はざい)を最小限に抑えるため自ら製材し、それでも出る端材は家具の内側に使用する。木くずは固めて燃料に使う。
「長く大切にしてもらえるものづくりを通じて、多くの人の人生と地球環境を豊かにしたい」と吉田さん。作る側と使う側、森と海、空のつながり……。「循環」を意識したものづくりの指針としているのが、SDGsだという。
■この家具の炭素貯蔵量はどの…