表面化は氷山の一角 増加するアニサキス食中毒、患者は年間2万人
編集委員・大村美香
海の幸を生で食べる日本人にとって、アニサキス食中毒は悩ましい問題です。魚介類に寄生するアニサキスの幼虫が起こす食中毒で、生で魚介類を食べた数時間後、激しい腹痛や吐き気に襲われます。
厚生労働省の統計でこの4年、原因別発生件数の最多が続き、2021年は344件、患者数は354人。しかし実際は患者数がもっと多いとする研究結果が出ました。
国立感染症研究所の杉山広・客員研究員らは18、19年の診療報酬明細書(レセプト)のデータを分析し、全国レベルの患者数を推計しました。18年は2万1511人、19年が1万7962人で、年平均約2万人という結果でした。統計数値の45倍以上です。
杉山さんらは05~11年にもレセプトで同様の分析を行い、その際は年間約7千人でした。増えている理由について、杉山さんは「流通の発達により、新鮮な状態で多種の魚が消費地に運ばれ、生食の機会が増加、事例数が増えている。また芸能人が感染体験を公表する影響などで、症状が出たら医療機関を受診する人が増えたことも関係しているだろう」とみています。
さらに杉山さんらは、18年…