大地震、そして通じなくなるスマホ 私たちができる対応と事前の備え

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吉備彩日 佐々木凌 グラフィック=米沢章憲
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 子どもからお年寄りまで、日常生活にはスマートフォンが欠かせない時代。誰とでもすぐ連絡をとれて、分からないことは手元で検索して情報を得られるが、巨大地震が発生すれば、通信インフラも広範囲に被害を受ける。発災後、何が起こるのか。どんな備えが必要なのか。(吉備彩日、佐々木凌、グラフィック=米沢章憲)

 20××年、ショッピングに出かけていた母と娘は、激しい揺れに襲われた。父の安否を確かめようと電話をかけたが、つながらない。列車の運行状況を調べようとしてもネットは通じず、道に迷っても地図アプリは使えない。飲み物を買おうにも、キャッシュレス決済は使えない――。南海トラフ巨大地震のような災害時には、こうした場面が現実になりそうだ。

東日本大震災でも途絶えた通信

 2011年の東日本大震災では、津波で基地局が流失▽地震でケーブルが切断▽停電で基地局が電源を喪失――といった原因で、沿岸部を中心に通信が途絶えた。総務省によると、最大で固定電話は約190万回線が被災、携帯電話・PHSは約2万9千の基地局が停止し、復旧までには1カ月以上を要した。

 また、安否確認などで多くの人が一斉に電話をかけたことで、回線が渋滞状態になる「輻輳(ふくそう)」が発生。被災地の重要通信を確保するため、通信各社は広範囲で最大70~95%の規制を行い、大きな被害が出なかった場所でも電話がつながりにくくなった。

 東日本大震災からまもなく12年。従来の携帯電話よりも高機能なスマホの普及により、通信への依存度は年々高まっている。世帯普及率は10年時点では9・7%だったのが、21年時点で88・6%に急増。連絡手段としてだけではなく、情報収集のツールや財布代わりでもあるスマホは、もはや生活には不可欠な存在だ。

 だが、通信が止まれば、これらは全て使えなくなる。22年7月に起きたKDDIの大規模通信障害時には、医療や介護、物流や金融、気象観測など広範囲に影響が及び、課題が顕在化した。

記事後半では、スマホを使う側としてどんなことを心がけておいたらいいのか、専門家にも分かりやすく解説してもらっています。

南海トラフ 1日後に不通のピークの想定

 スマホなどの携帯電話で通話…

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    太田泉生
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=人権)
    2023年1月31日7時0分 投稿
    【解説】

    東日本大震災を取材したことをきっかけに、私自身も家族と防災を考えるようになりました。 大災害で携帯電話が通じなくなったら、家族とは災害用伝言ダイヤル(171)で連絡を取り合うと決めています。記事にある災害用伝言板とともに、NTTが災害時に