ネット空間に疲れた私 オフラインで出会った「咀嚼を待つ情報」

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メディア空間考 金沢ひかり

 ウェブメディアを中心に仕事をさせてもらって早5年ほど。正直、ネット空間にちょっと疲れてしまった。

 昨年の流行語にもなり、本紙の新年企画のテーマの一つにもなっていた「タイパ(タイムパフォーマンス)」はインターネット時代ならではの感覚でもあり、つまりそれは、膨大な情報の中で生きる人々の可処分時間の奪い合いが激しくなっていることの表れでもある。

 いわずもがな、ネットには膨大な情報がある。特に、人々の意見や感情がストレートに発信されるSNSの「満腹感」は、すごい。私の仕事は、ネット上で公にされた個人の思いや体験の中から、「深く聞いたら意義がありそう」という話題を選別し、コンテンツにしていくことだ。さらに、コンテンツに角度をつけ、他の情報の中で「埋もれない」ような拡散の方法を考えることも、非常に重要だ。仕事としても、いちユーザーとしても、各種SNSは常にチェックしている。

 昨年末、東京都世田谷区の雑誌図書館「大宅壮一文庫」を取材した。取材の目的は、かつて文庫がまとめた、「平成の索引ランキング」について聞くことだった。80万冊の蔵書の中で、平成の間に話題になった出来事や人物が何だったのかを年ごとにまとめたランキングだ。例えば、1988年に発覚したリクルート事件を受けて竹下登首相が退陣に追い込まれた平成元(1989)年のランキング1位はリクルート事件、2位は消費税、といった具合だ。

 このランキングの元になって…

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