「所得制限なし」まであと2駅 広がる格差に3児の父が上げた声
国会の代表質問で与党からも求める声がでている児童手当の「所得制限の撤廃」について、SNSで早くから訴えてきた人がいます。3人の子どもの父親で、埼玉県在住の会社員、工藤健一さんは、保護者らでつくる「子育て支援拡充を目指す会」の代表として、国会議員らへの提言を続けてきました。国に先立ち、東京都などが「所得制限なし」の政策を打ち出すなか、政治の動きをどう見ているか、聞きました。
「所得制限、おかしい」
――所得制限について、改めて注目が集まっていますね。
2020年11月に、高所得者世帯の児童手当を廃止する方針が報じられたことをきっかけに、「おかしい」という声を上げ始めました。
SNSなどでその思いを発信すると、当事者の賛同が多く得られるようになり、私が呼びかけた「子育て支援拡充を目指す会」にも、全国から200人以上の保護者が加入してくれています。
少子化担当大臣に陳情を持って行ったり、厚生労働省で記者会見をしたりしてきましたが、政治に声を届ける難しさを痛感していました。
それだけに今回、国会の代表質問で、与党の立場からも「所得制限撤廃」という言葉が挙がったことには、驚きました。
所得制限の対象となる世帯、特に子育てをしている中間層は、ずっと苦しさを感じ、いまもしんどい状況が続いています。なるべく早く政策転換をしてほしいです。
住む場所でも「線引き」
後半では、子育て世帯にとっては「だまし討ち」になっているという、国の施策への思いも語ってもらっています。
――東京都など自治体が、国に先行する形で所得制限のない施策に取り組む動きも目立っています。
東京都が打ち出した、18歳まで1人あたり月額5千円の給付、私立中学校の授業料補助などの政策そのものは、いいことだと思っています。ただ、僕は埼玉県在住です。電車であと2駅いけば東京都ですが、我が子は対象外です。
各自治体が、国がやってくれないことを補塡(ほてん)するような動きも広まっていますが、それでは単に人口の奪い合いになってしまわないでしょうか。
21年末に支給が始まった「18歳以下への10万円」(子育て世帯への臨時特別給付金)も、国は所得制限を設けましたが、独自の負担で所得制限の対象となる世帯へも支給を決めた自治体もありました。いま、こうした自治体格差は、どんどん目立つようになっていると感じます。
今後は「所得制限なし」の子育て支援策を進める自治体に引っ越す人も増えるでしょう。それくらい、「どのような支援があるのか」という点は、当事者たちにとってはインパクトは大きいと思います。
社会からの「冷たさ」
――それだけのインパクトがあるのに、国の施策の多くは所得制限が設けられたままなのは、なぜだと考えますか。
一定以上の年収がある人たち…