「全員を試合に出すことはできなくても、全員をうまくすることはできる」。大阪桐蔭の西谷浩一監督(53)は常々、そう思いながら選手を指導していると言います。
昨秋、阪神大学野球の秋季リーグ戦で、天理大の俵藤夏冴(なさ)が三塁手のベストナインに輝きました。2018年、根尾昂(中日)、中川卓也(早大)らの控え内野手でした。
高校時代にレギュラーではなかった選手が、大学や社会人で活躍する。本当にうれしいことです。
うちは1学年につき部員が約20人。3年生が抜けた後は2学年で40人。そのうち、秋季大会で背番号をつけられるのは20人です。
じゃあ、残りの20人がダメかと言えば、そうではない。40番目の選手でも、レギュラーと同じだけの力をつけさせたい。
もし高校でダメでも、大学など次のステージでやっていける準備をして、大阪桐蔭に来てよかったと思わせてあげたい。
秋の大会で試合に出られなかった選手を対象に、11月は集中して練習試合を組みます。平日もです。レギュラー陣はグラウンドに残って練習です。
試合数は紅白戦を含め、多くて25試合くらい。打席数は60、70くらいになります。試合での結果、内容を見て、12月に課題や目標設定について個人面談をします。守備がダメなら守備の時間を多くしようとか、打撃でパワーがないなら筋力トレーニングのメニューを加えようとか。そして、冬場に個々のレベルアップに重点を置いた練習をします。
試合では簡単に良い結果は出ません。ただ、「あ、自分はここがダメなんだ」と気づける。でも、試合に出られなければ、「おれは使ってもらえないからうまくならない」で終わってしまう。そう思っているうちは伸びない。試合を経験して、何が足りないかを感じられたら、成長速度は上がると思います。
こういった、控え選手を対象とした練習試合は、十数年前まであまりやっていませんでした。2010年ごろからです。
僕の高校、大学時代はもちろんですが、それまでは「試合に出してもらえるところまで、自分で実力を上げてこい」「力のないものは試合に出られない」と考えていました。
その考えが変わるきっかけに…