今と未来をつなぐ「現実解」 三井物産が描く持続可能な社会づくり

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聞き手・青田秀樹
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2030 SDGsで変える

 資源・エネルギーからコンビニに並ぶ身近な商品まで。世界中で幅広くビジネスを手がける大手商社がSDGsに果たせる役割とは何なのか。三井物産の堀健一社長に聞きました。

 ――事業運営で「自然資本」という考えを強調していますね。

 食べ物の長い供給網(サプライチェーン)や森林保全などが念頭にあります。農業をおこして作物をつくり、人間が食べる。あるいはエサとなり、畜産や魚の養殖でたんぱく質を生んで人間に届く。森林資源を保護すると生物の多様性が保たれ、防災にも、水源の涵養(かんよう)にもなる。

 つまり土地、農地、海、それぞれと向き合いながら、どのように産業を展開すれば、自然資本を損なわずに、栄養価の高い、体にいいものを消費者に届けられるか。そこまで考えないと、仕事として完成しない。自然資本とどう関わり、保全していくかという意識を持たないと持続可能な仕事はできないという発想です。

自然資本を守りながら成果を出す

 企業には、ステークホルダーから資金をお預かりし、事業運営を通して成果(利益)を出していく責務があります。その前提条件となるのが、自然資本、あるいは環境、気候変動の問題との調和を取りながら我々の長期的な暮らしを守るような価値をつくっていくことです。限られた自然資本を保全する形で、持続可能な形で仕事を進めながら事業成果とリターンを出すことは、時代の要請です。SDGsでまとめられたような要素を満たさねば、長続きする仕事はできません。

 ――社屋に入ると森の香りがします。アロマだとか。

 当社は国内で4位、約4万4千ヘクタールの森林を保有しており、森を大事にする会社だと、来社される方たちに知ってもらえればと考えています。環境保全と林業の継続に役割を果たしていきたいと思っています。ドローンによる航空観測で、森林による二酸化炭素(CO2)の吸収効果を科学的に分析する技術革新も利用していきます。

 紙パルプの原材料として植林事業を手がけてきた豪州では、森林の資産運用会社に投資をし、いろんな投資家と事業を広げています。原生林の回復にも取り組んでいます。森林に固定されるCO2を増やし、排出権取引の強化にもなります。

化石燃料の知見が新時代の仕事に

 ――森の持つ役割がビジネス上も大きくなった、と。

 商社として色々な産業に触れてきたことが(気候変動対策にも)役立っています。もともと排出権取引を手がけ、一定の金融インフラもある。豪州では天然ガス開発もしてきました。地下の構造や地質への理解が、ガスを掘削した場所にCO2を貯留する仕事に生かせます。化石燃料がらみの知識が新時代の仕事につながっています。

 ――世界でも珍しい業態の総…

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